ナサケモノの日記

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アルバム曲でミスチルの歴史を振り返る① (EVERYTHING~Qまで)

2017年5月10日。Mr.Childrenがデビュー25周年を迎えた。このバンドがなぜこれほどまでに愛されるのかを考えてみたところ、一つの結論にたどり着いた。このバンドは一つの物語の上を生きているのだと思う。彼らのアルバムはストーリー性が強い。夢に向けて駆けあがる青年を描いた初期、夢を叶え虚無感に苦しんだ暗黒期、暗黒期から復活しポップスバンドとしてリスナーを楽しませると決めた2000年初期、死の淵にまで追い込まれ身近なものへの愛を歌うようになった2007年前後、音楽家としてのエゴを捨てリスナーの背中を押す曲を書き始めた2010年前後、バンドとしての真価を問い直した最新アルバムリフレクションなど、4人の進化がここまで明確に見られるバンドはない。まるで一冊の本を読んでいるような彼らのバンドとしての軌跡を、アルバム曲を紹介しながら振り返っていこうと思う。この記事ではシングル曲や認知度の高い曲はできるだけ避け、ある程度コアなファンにしか知らないような曲をあえて選んだ。「この曲がない。やり直し。」みたいなものがあればぜひコメント欄に書いてほしい。

 
ちなみに前回の記事がこちら

アルバム『EVERYTHING』

Children's World

最近は2016年夏の未完ツアーで披露されて話題を生んだこの曲。未完の映像作品ではイントロの部分で女の子が泣いているカットが印象的。Mr. Childrenという伝説の始まりとも言える一曲。大ヒット、全盛期から暗黒期、いろんな物語を経た彼らの原点が垣間見える一曲。

アルバム『KIND OF LOVE』

虹の彼方へ

いかにも初期のミスチルという感じの曲。全体的にChildren's Worldと雰囲気が似てる。有り余るエネルギーをどこに発散すればいいのかわからない思春期の子供たちの歌という感じ。この曲は2002年の7月に桜井和寿脳梗塞で倒れ、おじゃんになってしまったツアーの振替として行われた一夜限りの伝説のライブ 『TOUR 2002 DEAR WONDERFUL WORLD IT'S A WONDERFUL WORLD ON DEC 21』 のアンコール一曲目にて桜井さんの弾き語りが披露された。この曲をやると言った時ギターの田原さんは驚き、本当にやるのかと念押しをしたそうだが、桜井がどうしてもやりたいというので、セットリストに組み込まれることとなったそう。昨年の「ホールツアー虹」の本編最後にも演奏された。おそらく桜井としても思い入れが強い一曲なのだと思う。

Distance

イントロのざらついたギターが心地よく響く。喪失感溢れるハイウェイドライブを描いた歌詞。いかにも昔っぽい曲調と歌詞。トランペットソロの感じとかもなんとなく平成初期な感じがする。だからこそ今聴くと逆にすごく新鮮。サビで盛り上げるのではなく低調なメロディーが低空飛行していく感じがいい意味でミスチルっぽくない。Cメロに関してはかなりミスチルっぽい展開となっている。

車の中でかくれてキスをしよう

初期のミスチルの代表曲と言ってもいいクオリティーの曲なのだが、ベスト盤などには収録していないため、ミスチルの隠れた名曲として語られることが多い。ミスチルファンの友達などに好きな曲を聞かれ、この曲を挙げると「おっ」という反応をされると思う。歌詞の内容は思春期の子供から大人になっていく男性の視点から書かれている。夜のセンチメンタルな感覚と青春の情景が繊細に描かれている。

アルバム『versus』

Another Mind

アルバム「versus」に収録されている一曲。前作「KIND OF LOVE」ではAll by myselfやDistanceなどで若干のダーク路線を模索していたように感じるが、その試みが形になったのがこの一曲だと思う。初期のミスチルはかわいらしい青春っぽい曲が多いのだが、この曲はその中では珍しくダークでカッコいい系の曲なのである。このアルバムにおいては「蜃気楼」も曲調は違うのだが、同じような世界観の方向性を目指しているように感じる。

マーマレードキッス

ミスチルっぽさが全くないこの一曲。最近では映像化されなかったan imitation blood orangeのドームツアーにて演奏された程度でライブでは超レア曲。「versus」に収録されている曲なのだが、このアルバムは前作に比べてかなり色々と実験的なことをしているように感じる。まさに「ミスチル現象」前夜とも受け取れるこのアルバムは桜井和寿の試行錯誤がよく感じられる。

さよならは夢の中へ

こちらは少し重ためのバラード。失恋間際にいるカップルの歌である。長い夜が明け、二人の恋愛も再び前を向いて歩きだそうという歌詞なんだと思う。個人的には二番のAメロ後に来るギターソロがすごく好き。

アルバム『Atomic Heart』

クラスメイト

この曲もミスチルファンの間ではかなり人気の高い「隠れた名曲」。同窓会か何かで再開した昔のクラスメイトと交際を始めた男の気持ちを歌った可愛らしい歌詞。演奏や使っている楽器がすごくゴージャス。ベースもかなり動くし、シンセや管楽器やギターで装飾が付け加えられており、聞いていてなんとなく音楽的に高尚な気分になる笑 近年ではホールツアー虹で披露され、ファンを喜ばせた。

ジェラシー

アルバム「Atomic Heart」は桜井和寿に子どもが生まれ、その時に感じた世界を描いたアルバムという側面が強い。そのようなバックグラウンドを考えた上でもこの曲はかなり異質。ドキュメンタリー映画ESでも語られているが子どもが生まれたことによって純粋な幸福感だけでなく、遺伝子や生命の神秘を感じた桜井の完成がそのまま曲だと思う。ギターの不気味な感じやエロティックな歌詞、独特なメロディーなどは桜井和寿の変態性を垣間見せてくれる。

アルバム『深海』

シーラカンス

ミスチルのアルバムの中でも最も賛否が分かれ問題作と言われたアルバム「深海」のリードチューン。サウンド面において「深海」では前作の「Atomic Heart」とは打って変わって装飾のない曲が多い。シーラカンスもそんな深海を象徴させるような、音の骨組みだけが露骨に表れた一曲だ。アルバムの導入として「深海」の世界観にぐっと引き込まれる一曲。「シーラカンス」は昨年の京都音楽博覧会くるり桜井和寿で演奏された。

アレンジで装飾を施していない曲が多い「深海」流れの中で最もインパクトの強い曲と言っても過言ではない一曲。一個前の「ゆりかごのある丘から」の物悲しく、静かな雰囲気をガラッと変える強烈なイントロ。そして過激な歌詞。かっこよすぎる。最後のゴスペルのクオリティーも圧巻。

深海

「深海」というアルバムの最後の一曲。100万枚売れるバンドになるという夢を叶えてしまったMr.Children。彼らがそこで見た世界は空虚なものだったのだろう。「ミスチル現象」に代表されるシングル曲をすべて封印したこのアルバムは商業主義とは真逆に進んだMr.Childrenの社会への抵抗であったのだと思う。歌詞にもあるように、このアルバムは大衆の心に向けてメッセージを送るのではなく、桜井和寿の心の海の中に深く深く潜っ行ったアルバムなのだ。そしてアルバムのキーワードでもあるシーラカンスは恐らく「ミスチル現象」が起こる前の純粋に夢を追うバンドの衝動のメタファーなのだろう。そのシーラカンスの向かう先が進化なのか退化どちらともとれる歌詞になっている。そしてここから数年間のミスチルは商業主義と相反するダークサイドに落ちていくのであった。

アルバム『BOLERO』

タイムマシーンに乗って

桜井和寿が本気で音楽を辞めようか悩んでいた時代のアルバム「BOLERO」の3曲目に収録された一曲。何をしても爆発的に売れ、世間からアイドル扱いされることに違和感を感じていたMr.Children。「こんな暴走的なロックをやってもまだ世間は俺たちをおだてるの?」とでもいうような挑発的な曲。

Brandnew my lover

この曲もある意味世間への挑発的な一曲。爽やかな青春ソングを歌っていた初期とは打って変わって、「ファックする豚だ」なんて言うようになってしまった桜井和寿笑。それだけ刺激的な曲を作らないと自分自身の存在が世間の波に飲まれてしまうような不安があったのだろう。とにかくギターの主張が強くかっこいい曲。

傘の下の君に告ぐ

こちらもいわゆる鬱曲。「一般市民よ 平凡な大衆よ さぁコマーシャルによって踊ってくれ」だとか「あっぱれヒットパレード」なんてまさに当時のミスチルの感情を歌っているようだ。メディアに踊らされる物好き達に対して痛烈な批判の歌なんだろう。今の桜井和寿であれば間違いなく書かないであろう歌詞。

幸せのカテゴリー

この曲はいわゆる隠れた名曲というやつだろう。「BOLERO」の中では唯一穏やかな一曲と言ってもいいだろう。歌詞は虚しさ漂う倦怠期のカップルの別れを描いている。なんだか当時のミスチルの文脈から考えるとまた別の聞こえ方がする。初期の初期から応援してくれていたファンに対して、「変わってしまった俺らをもう愛すことなんてできないだろう?」みたいな歌詞に聞こえなくもない。あくまで一つの解釈に過ぎないのだが「日の当たる場所に続く道 違う誰かと歩き出せばいいさ」という歌詞と当時のミスチルを重ねるとそのように聞こえてしまわなくもない。こんなことを言うとファンの方々からは怒られるかもしれないがw

アルバム『DISCOVERY』

DISCOVERY

アルバム「DISCOVERY」の一曲目。1997年の「BOLERO」発売後活動休止を経て、ミスチル復活という意味合いもあったのがアルバム「DISCOVERY」。イントロのギターのリフはもはや貫禄さえ感じさせる。このアルバムはとにかくやりたいことを全部やろうということで作られたそうだ。アルバム内の曲のラインナップも多彩である。

Simple

ある意味悩み疲れてある意味一つの悟りを開いたというか、深海の出口のようなものを探しているミスチルにとって一つの正解を見つけたような歌である。色々思い悩んだけど、自分の近くにいる人だけでも幸せに出来ればいいやという曲なのだろう。この曲と「ラララ」は後のミスチルの等身大を歌うというスタイルの先駆けとなっているのではないだろうか。

#2601

Simpleのような穏やかな曲もあると思えば、こんな激しいロックもあるというのがアルバム「DISCOVERY」の特徴。ロックな曲で暗黒期のミスチルを象徴する一曲の一つ。若いころの桜井和寿は恐らく曲を創るのに苦しみながらも何かを創ることで自分が救われていた部分があったのだと思う。彼にとって唯一の救済措置が音楽だったのだろう。桜井は1997年に不倫がメディアに報道され、プライベート面でも苦しんでいたのがBOLERO, DIACOVERYの時代だった。

アルバム『Q』

CENTRE OF UNIVERSE

アルバム「Q]の一曲目。前作「DISCOVERY」以上に遊び心溢れるアルバム。曲のテンポをダーツで決めたり、一曲の中で曲調ががらっと変わったり、実験的な曲が多数ある。「すべては僕の捉え方次第だ」という歌詞は桜井が深海に沈む中で見つけた一つの答えだったのだろう。「あぁ世界は素晴らしい」という歌詞も彼の心境が暗黒期から脱却に近づいているように感じさせる。

スロースターター

かっこよすぎる。テンポは速くないのだがギターのリフがめちゃくちゃカッコよく、闘争心むき出しの曲。今までもその後も、こういう曲はミスチルにはない気がする。

つよがり

「口笛」と並んで「Q]を象徴するようなバラード。後の「しるし」や「sign」や「365日」などのバラードの原点はこのアルバムにあるのかもしれない。ピアノサウンドが強すぎてロック色が消えたと批判が強かったいわゆる「コバタケ最強時代」の原点は意外とこの辺にあるのかもしれない。

十二月のセントラルパークブルース

いやぁこの曲は大好きです。「Q」を象徴する曲の一つだと思う。

友とコーヒーと嘘と胃袋

この曲もとことん遊び尽くしている曲。遊び心がある中でも、辛いことも楽しいことも全部飲み込んで筋肉に変えて強くなろうっていうメッセージが込められてる。途中で桜井和寿の落語が入る。「思いついたアイディア全部やろう!」というこのアルバムのコンセプトに沿った曲となっている。

ロードムービー

この曲もミスチルファンの中で強い指示を集める隠れた名曲。桜井和寿は感情の微分の天才だと思っているのだが、この曲にはそんな彼の才能が存分に活かされている。この曲では感情を直接的に表す表現がない。情景描写だけなのだが、主人公の感情がすごく伝わってくる。
 
街灯が2秒後の未来を照らし オートバイが走る
等間隔で置かれた 闇を超える快楽に 
また少しスピードを上げて
もう一つ次の未来へ
うん。天才だ。

Hallelujah 

アルバム「Q」の最後から二番目の曲にしてこのアルバムの鍵となる曲。このアルバムのジャケットはミスチルの歴代のアルバムの中でも有名だ。潜水士がコーヒーカップを持ち正面のを見ている絵。これは深海からの脱出を意味している。つまり暗黒期の終わりだ。そんなMr. Childrenの次の次元への進化を思わせるのがこの曲。マイナスからプラスへと座標軸を渡るという表現に彼らの決意が感じられる。
 
という事で今回はミスチルのデビュー記念特集として、「EVERYTHING」から「Q」までのアルバム曲を軸にミスチルのデビューから約10年間を振り返ってみました。次回は深海期を終え、次なるステージへと進む『It's a Wonderful World』以降のミスチルを見ていきたいと思います。