Mr. Childrenの「僕らの音」に見る桜井和寿の作詞の世界

今回は初めてスピッツではないアーティストについて書いて見る。

Mr.Childrenの「僕らの音」の解釈に関しては諸説ある。この曲は桜井和寿の作詞の巧さが顕著に現れた一曲であると思う。彼の作詞の一つの特徴としてミクロとマクロを同じ視点から描くという点が挙げられる。

この曲は初々しい恋の歌とも捉えられる一方何か社会の大きな問題に関して歌っているようにも捉えられる。ファンの間では911の影響を受けたという解釈が多く、アルバム「HOME」に収録されている「もっと」と同時期に作られた曲であり、その「もっと」がグラウンドゼロから影響を受け作られた曲であるということを桜井自身も述べている。

出だしの歌詞はまさにそんな不安定な世

情勢から影響を受けている。

Bye bye bye bye bye bye
風の音が 鳥の声が
別れの歌に聞こえる

物悲しげな曲の始まりはこの曲の優しく切ない世界感を醸し出している。

君は九月の朝に吹き荒れた通り雨
叩きつけられて
虹を見たんだ そこで世界は変わった

主人公は人を想うことを通して世界の全てが愛を歌っていることに気づく。それと同時に人の儚さや虚しさも知ってしまう。

そして二番のサビでは桜井和寿節が炸裂しており秀逸である。

名作と呼ばれる作品を見たり聞いたり読み漁ったりして
大人を気取って少し無理して暮らした
だけど君のこととなると途端にわからなくなる
恋するだけの阿呆になり
ただ ただ ただ 胸が苦しくなる

色んな知識を得た賢くなっていっても、恋だけはその知識が応用出来ないことを主人公は知り。世界の様々なニュースを知っても自分の一番大切な人のことをわかってあげられず、ただ胸の痛みだけが残るという恋愛における虚しさや苦しさを巧みに描いている。私は桜井和寿のことを「感情の微分の天才」だと思っている。小説家や詩人のような情景描写が彼はとにかく上手い。

相手のことを少しずつ理解し、少しずつ距離を縮めていけたらいいという主人公の願いがこの曲には込められている。その気持ちの背景には911やそれによる紛争など相手への愛に欠ける行為が世の中に蔓延していた時代背景が隠れている。

「僕らの音」は世界の片隅の小さな恋愛の物語と別の世界で起こる大規模な紛争に対する願いが込められた歌なのではないだろうか。

 

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